8月6日の日記

2007年8月6日
 手に巻かれた包帯を、淡い色をした男がゆっくりと解いていく。
「肉体の傷の方が、治りが速いから」
 こんなものどうってことないんだよ、と少年は言った。
 弁解するような、口調。
「それでも、傷は傷です」
 破傷風にでもなったらどうするおつもりですか、と至極丁寧に。
 しかし叱る様な調子で男は言う。
「謝らなければならない、理由はありません」「それ以上、御身を削らないで頂きたいのです」
 真っ黒に塗りつぶされたような少年は、男を見た。
 淡い色をした男も少年を見る。
「断る」
 はっきりと、少年は言った。
「でしょうね」
 男もはっきりと返した。

 美しくあれ、と少年は言う。
 正しくあれ、と少年は言う。
 醜い行為など、間違った行為など。
(だがしかしそれは美しくも、正しくもなく。
   醜くも、間違ってもいないはずだった。)

「何もしてこなかった僕が、やりたいと思ったことなんだ」
 だから許せ、と少年は言った。
 私の許しなどいらないでしょう、と男は言った。

「全ては、あなたの思うがままに」

 そう言って男は、包帯を外し終わった手に接吻をした。
 愛惜しむように、少年は男の淡い色をした髪を撫ぜた。
 男は顔を伏せたまま、少年に言った。
「死なないで下さい。我があるじ」
 そう言われても、少年は何の表情も浮かばせることはなかった。

 否、ただ非道く愉快そうに、無理な相談だね、と少年は美しく可憐に笑った。

+++
最近小文をあげてないなーと思ったので
少年と青年
ゆめゆめドリーム!

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