8月11日の日記
2007年8月11日 夢をみているのかと。本来は白い、今は彩色に溢れる。
花で埋もれた、ベッドで眠る人。
包帯と管と花に塗れたその人。
生きていないように思える。
私は立ち上がり、それに近付き顔を伺い見る。
下半分は呼吸補助具。
上半分の右は包帯で覆われている。
「何を、見ていらっしゃるのですか」
あるいは何を思っていらっしゃるのですか、と。
本当にこの人は生きているのか。
敷かれたシーツの色よりも白い。
包帯の隙間から僅かに見える、肌の色。
嗚呼。美しいと思う。
生きていようが、死んでいようが関係ない。
ただ其処に存在るそれは、この世の何よりも気高く、甘美で、そして完全だと思った。
そして同時にそれを、それを思う自分を、嘲る。
何が完全なのだと。これの何が美しいのかと。
これは何もかもが欠けている。
腕も、脚も内臓も生きる意志も命すらも。
醜い、と。貶す心も何処かにあった。
否、そうではない、そうではないのだ。
「これはあなたの夢なのですか」
あるいは私の夢なのですか、と。
問うように。けれど答えは求めない。
木偶のような己を。傀儡のような私を。
「あなたは如何、お考えなのですか」
あるいは如何思っていらっしゃるのですか、と。
部屋を埋め尽くすほどの、花を。切り取られたいのち。
愛でるように、愛しむように――――愛すように。
美しく、麗しく、愛しく。壊れ物のような、その方を。
壊してしまったのは私だった。
何を考えていたのだろう、と。
恐らく何も考えていなかったのだ。
「一目見たその時から」
あるいは出会うその前から。
生まれた時から。生まれる前から。
「あなたの事を、壊したかった」
あるいはあなたの事を愛したかった。
壊すのと同じ様に、私はあなたを愛したかった。
何故私は壊す事を選んでしまったのか。
何故私はかの人を愛せなかったのか。
何故私はこんなにも歪んでいるか。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
謝っても謝りきれない。
手を、包帯に包まれた手をそっと。
何の力も入れないように。壊れ物でも扱うかのように。
否、壊れた物を扱うように、握る。
「どうか、私を」
後悔していない私を。
どうか許さないで下さい、と。
私は言った。
この言葉の行方は誰が知っているのでしょう?
+++
お題『夢』で書き始めたら掠りもしなかった
こんなのなら一時間もかからずに書ける
二頁分
花で埋もれた、ベッドで眠る人。
包帯と管と花に塗れたその人。
生きていないように思える。
私は立ち上がり、それに近付き顔を伺い見る。
下半分は呼吸補助具。
上半分の右は包帯で覆われている。
「何を、見ていらっしゃるのですか」
あるいは何を思っていらっしゃるのですか、と。
本当にこの人は生きているのか。
敷かれたシーツの色よりも白い。
包帯の隙間から僅かに見える、肌の色。
嗚呼。美しいと思う。
生きていようが、死んでいようが関係ない。
ただ其処に存在るそれは、この世の何よりも気高く、甘美で、そして完全だと思った。
そして同時にそれを、それを思う自分を、嘲る。
何が完全なのだと。これの何が美しいのかと。
これは何もかもが欠けている。
腕も、脚も内臓も生きる意志も命すらも。
醜い、と。貶す心も何処かにあった。
否、そうではない、そうではないのだ。
「これはあなたの夢なのですか」
あるいは私の夢なのですか、と。
問うように。けれど答えは求めない。
木偶のような己を。傀儡のような私を。
「あなたは如何、お考えなのですか」
あるいは如何思っていらっしゃるのですか、と。
部屋を埋め尽くすほどの、花を。切り取られたいのち。
愛でるように、愛しむように――――愛すように。
美しく、麗しく、愛しく。壊れ物のような、その方を。
壊してしまったのは私だった。
何を考えていたのだろう、と。
恐らく何も考えていなかったのだ。
「一目見たその時から」
あるいは出会うその前から。
生まれた時から。生まれる前から。
「あなたの事を、壊したかった」
あるいはあなたの事を愛したかった。
壊すのと同じ様に、私はあなたを愛したかった。
何故私は壊す事を選んでしまったのか。
何故私はかの人を愛せなかったのか。
何故私はこんなにも歪んでいるか。
「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」
謝っても謝りきれない。
手を、包帯に包まれた手をそっと。
何の力も入れないように。壊れ物でも扱うかのように。
否、壊れた物を扱うように、握る。
「どうか、私を」
後悔していない私を。
どうか許さないで下さい、と。
私は言った。
この言葉の行方は誰が知っているのでしょう?
+++
お題『夢』で書き始めたら掠りもしなかった
こんなのなら一時間もかからずに書ける
二頁分
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