「私には人の傷みがわかりません。私の痛みが彼方にわからないように」
つい、と胸の傷、皮膚の薄い部分、を辿るように動いた指のその冷たさに少しびくりとする。
「痛かった、のでしょうか。今も痛むのでしょうか。けれど私にはその傷みの欠片さえもわからない」
羨ましい、と言わんばかりにそれは延々と傷を撫で続けた。
これからも治らないであろう傷の上を。体温が無いに等しいその指で。
それはただ撫でているだけだと言うのに、傷を益々深くしている。
二度と取り外せない枷を、嵌められているのではないだろうか。
しかしその辿る手を除けようという気にはならなかった。
こいつは一体なんなのだろうか、と。(そして自分は一体なんなのだろうか)
酷く冷めた眼で、それでもその瞳の奥深くには何かが音を上げて燃えているのがわかる。
その何かはきっと自分を滅ぼすであろうあの男の眼に光るものと同じ。
自分に会う度にその炎は大きく燃え上がる。
それが酷く自分を愉しませていることを、知っている。
この手の持ち主は、その眼を一体何に向けているのか。
少なくとも自分で無い事は確かだ。
ああ、それが此方に向けばいい。
それに名付けられた感情は酷く自分には心地良かった。
そして殺して呉れればいい。
そう思った瞬間、ただ撫でるだけだった指に力が込められた。
戯言の断片ですら許さないと言うように。
それは傷を抉ろうとする為ではなく、ただ力が込められたと言うだけであったが。
冷たい炎が溢れ出した。
「許しません」
ただ一言だけ言って傷を辿っていた手を離す。
その後すぐにふわふわとした何かが胸に押し付けられる。それは奴の頭だった。
「少し眠ります。二時間たったら起こしてください」
それと、と繋ぐ。
「余計な考えは、起こさないように」
何に対しての言葉なのか、とすでに眼を瞑っている奴に言うことはなく。
釘を刺されたな、とただそう思った。
+++
蟹夢な心意気で
でも男か女かもわからないよ
彼とか彼女とか出すのをやめてただ奴だけにしてみる
蟹がマゾ気味?なにそれ あと微妙に鷂蟹
エイって海鷂魚って書くんですよ知らんかった
つい、と胸の傷、皮膚の薄い部分、を辿るように動いた指のその冷たさに少しびくりとする。
「痛かった、のでしょうか。今も痛むのでしょうか。けれど私にはその傷みの欠片さえもわからない」
羨ましい、と言わんばかりにそれは延々と傷を撫で続けた。
これからも治らないであろう傷の上を。体温が無いに等しいその指で。
それはただ撫でているだけだと言うのに、傷を益々深くしている。
二度と取り外せない枷を、嵌められているのではないだろうか。
しかしその辿る手を除けようという気にはならなかった。
こいつは一体なんなのだろうか、と。(そして自分は一体なんなのだろうか)
酷く冷めた眼で、それでもその瞳の奥深くには何かが音を上げて燃えているのがわかる。
その何かはきっと自分を滅ぼすであろうあの男の眼に光るものと同じ。
自分に会う度にその炎は大きく燃え上がる。
それが酷く自分を愉しませていることを、知っている。
この手の持ち主は、その眼を一体何に向けているのか。
少なくとも自分で無い事は確かだ。
ああ、それが此方に向けばいい。
それに名付けられた感情は酷く自分には心地良かった。
そして殺して呉れればいい。
そう思った瞬間、ただ撫でるだけだった指に力が込められた。
戯言の断片ですら許さないと言うように。
それは傷を抉ろうとする為ではなく、ただ力が込められたと言うだけであったが。
冷たい炎が溢れ出した。
「許しません」
ただ一言だけ言って傷を辿っていた手を離す。
その後すぐにふわふわとした何かが胸に押し付けられる。それは奴の頭だった。
「少し眠ります。二時間たったら起こしてください」
それと、と繋ぐ。
「余計な考えは、起こさないように」
何に対しての言葉なのか、とすでに眼を瞑っている奴に言うことはなく。
釘を刺されたな、とただそう思った。
+++
蟹夢な心意気で
でも男か女かもわからないよ
彼とか彼女とか出すのをやめてただ奴だけにしてみる
蟹がマゾ気味?なにそれ あと微妙に鷂蟹
エイって海鷂魚って書くんですよ知らんかった
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