5月11日の日記

2008年5月11日
彼は悲しみの海の中にいた。
爪先立って、ようやく口が海面から上に出るほど所に彼は立っていた。
そして嘆きもせずはふはふと呼吸をしている。
ときどき波がきて、ばしゃんと彼にかかってそれでも彼は必死に息をしている。
潮は引かないどころか、さらに満ちていく。
たぷんたぷんと音をたてて揺らぐ海は、彼をゆっくり殺そうとしている。
きっとそれもしかたがないのだろうと思う。
彼の望んだことだ。彼自身の望んだことだ。

今日も悲しみの海はじわりじわりと満ちていく。
それが彼を蝕んでいるとしてもそれは彼にとっての幸せなのだと思っている。

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