奴はどう思うのだろうかという考えが浮かんで、少し血の気が引いた。まさかとは思うが、そんなことはないだろう。多分。奴に関して、俺はまったくわからない。理解不能だ。もう外に出たくなどなかった。しかし、奴から呼び出しを受けている。行かなければなるまい。憂鬱だ、と思いながら手早く身支度を整える。粗めの布に触れた指先にピリッとした痛みがはしった。視界から除外していた指を見ると、今まで思考の片隅にすら置いていなかった現実を思い出した。微妙に薄皮が張っている以外は無防備に、再生途中の柔らかな肉がそこにはあった。繊細な肉を防護するように常時被さっている爪を剥いだのは紛れもない、昨日の俺自身だ。なんて面倒な事をしてくれたんだ俺、と俺に文句を言ってもどうしようもない。文句を言えば、念じるだけでしゅるしゅると爪が伸びるようになるわけでも、剥がれた爪を乗せたらくっくようになるというわけでもない。もしそんなことができたとしたら俺は、世界ビックリ人間選手権の出場権を獲得しようとしていることだろう。そんな恥さらしをするくらいなら死んだ方がマシだった。いや現在俺の置かれている状況から抜け出せるならどんな地獄の労働でもしようじゃないか。睡眠が圧倒的に足りていないようだ。思考にぼんやりと靄がかかっている。これでは、まともに、学校に、行けない。(そもそも何故学校に行かなくてはならないのか、など)取り敢えず誤魔化せるだけ誤魔化そうと思い、靄のかかった頭で懸命に思案して結局手袋をしていくということになった。流石に絆創膏だらけの指先では料理に失敗しちゃった☆としか思えない……ではなくて、あからさまに不自然だ。不要の季節に手袋というのもあれだが、絆創膏だらけよりはましだろう。そうでなくとも頬の絆創膏は目立つ。絆創膏を身体中に貼るのが今日日の流行なんだと言い張ってもいいが、デメリットが多すぎるだろう。常考。時計を見ると遅刻するかしないかというギリギリの時間だった。まあ、遅れてもいいだろう。
呼び出しは放課後だ。
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ワッフルワッフルの続きの続き
とくべつ アイテム そうちゃく →てぶくろ
前のとあわせると2500文字あった
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