3月6日の日記

2009年3月6日 日常
「僕は、君のことが不思議だ」

一言一言区切られたような、不躾な言葉群を吐いたのは、目の前の男だった。
茶けた黒髪を目に掛かるくらいのばしている。名前は確か――。

「私のことが不思議、とはいってくれるね、人見稀彦くん」

厭味のように名前をつけ足すと、人見の持つ独特の雰囲気がゆらりとゆらぐのを感じた。

「不快に思ったなら謝るよ」

どうやら男が動揺しているらしいのが感じ取れ、それこそ私には不思議なことの様に思えた。
人見稀彦。
平々凡々の取るに足らない、しかし大部分の人間から奇人とて扱われている、変人である。
変人であるくせに今の今まで私となんの関わりも持ってこなかった彼が、いまさら私に何の用があるというのだろうか。いくつかの推測を脳内に駆け巡らせる。人見は私の一線を引くような眼差しに気付いたのか、饒舌に続けた。

「君が不思議な人ということじゃないんだ。
 俺は君にそんなレッテルを貼りたいわけじゃない」

言い訳染みた言葉を並べる人見は明らかに焦っている。
その原因が私の沈黙にあると私自身が気づくことにそう時間はかからなかった。

「つまり」

たどたどしく続く言い訳にうんざりした風を装って、切り込む。
すると男はぴたりと話をやめ、私の言葉を待つようにじっとこちらに視線を置いた。
その様子は飼い主を待つ犬を思い起こされて微笑ましい。
しかし髪の隙間から覗く瞳はそれに不釣合いに、いままでみたこともないような色をしている。きらきらと、まあるい宝石のように。
見蕩れてしまう。

「君は、つまり何がいいたいんだ」

私はどうにか、男の魔力を跳ね除け言葉を繋いだ。この男の瞳には魔力がある。
魅力ではなくそれでこそ不思議な力が、この男の瞳には備わっていた。
ばくばくと鳴る心臓がその効果を表している。
この男は私にとって弱点となりえるに違いない。直感が訴えていた。

「どう言っていいのかわからないけど」

(これは、この男は駄目だ。これは私が、私の、)

上手く思考が回らない。困る。困った。こんなことなかったのに。
そんな私の考えを余所に無神経にも男は、ちょっとした微笑みを携えて言葉を続けた。


「俺は君に、惹かれてるらしいんだ」


私は何が何だかわからず勢いのままに、人見の頬をはった。
そしてぽかんとする男を尻目にこの場がどこなのかまったく思慮なく、私の口は勝手に動く。

「君はまあ、よくもそんなことを恥ずかしげなく言えるものだな!」

我に返った私を迎えたのは、他人の好奇の視線と呆然としたままの人見の姿だった。

+++
灯と人見の正式な出会いは学校図書館内での稀彦のへたくそなナンパからだったって話
灯:知識として知る→人見:灯をみかける→
灯:人見が視界にちらちらするようになる→人見:話しかける←ここらへん
こんなに長くなる予定ではなかったのに原形は携帯で書いてました
灯さんはツンがヒート気味らしい 二日続けて人見と灯さんとか
ユノのところでもでてきそうな気がしました
つか過去のを調べてみると人見って一人称ぼくだったりしてるんですけど
それはそれで叶衛くんと駄々被りなので一応暫定俺です三年前くらいに初出らしい

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