3月31日の日記

2009年3月31日 日常
終わりを告げる鐘が鳴る。
俺はどういう顔をしていいのかわからずに、取り敢えずその鐘の音を聞いた。

今日、一人の少女が処刑された。

魔女なのだそうだ。怪しげなことを言っては他人を途惑わせていた。その少女の一言に、なにやら言われた人は驚き慄いた。なぜそれを知っているのかと厳しく問いただす者もいたが、少女が何かわかると舌打ちをして去っていった。
少女は白痴のものであった。

――そして彼女は俺の幼馴染でもあった。

彼女はお婆さんと二人暮らしだったが、つい一ヶ月ほど前に少女は一人になった。

丁度二人で、川岸に座り込んでとりとめもない話をしていた時だった。
彼女との会話は要領を得ないものであったが、彼女は楽しそうであったしまた俺も楽しかった。会話が通じようが通じまいが、話しているだけで満足だった。
その日もそんなことをしていた時だった。べらべらと勝手な話をしている最中に彼女はぴったりと黙った。彼女は一度話をしだしたらその話が終わるまで絶対に黙らなかったので、俺は驚いて彼女の方を向いた。
起こったことが信じられないかのように、彼女は沈黙していた。
そしてそれがようやく理解できたのか、彼女は音をつくった。

「おばあが死んだ」

そのまま、彼女はわんわんと泣いた。俺はわんわんと泣く少女に対して、これにも人の死がわかるのかとどこか違うところで感心を持った。
そうして彼女はたった一人の天涯孤独の身の上となったのだ。

たった一人の家族を亡くした少女は、荒れた。誰それ構わず覗き暴いた。
一ヶ月の凶行。その結果があの通りだった。
少女の幼馴染であり話相手でもあった俺に、役人がなにやらを確認しにくると思ったのだがそんなことは一切なかった。前々から薄気味悪いとでも言われていたのだろう。役に立たない。早く処分してしまえ。

そして、彼女は処刑された。

俺は見に行かなかった。見に行けなかった。ただ鐘の音だけを聞いていた。
彼女はいったい何を思っていたのだろうか。人の死を理解できる彼女は自分の死をどう思っていたのだろうか。何もできない俺を、恨んでいたのだろうか。

楽しそうに話してくれた彼女。一緒に連れたって歩いてくれた彼女。俺の隣にいてくれた彼女。彼女はもういない。死んでしまった。

見えない目からぼろぼろと涙が零れる。触れてみると温かい。
俺は彼女のことが、好きだったのだとその時初めて気付いた。


荘厳なる鐘の音は、一人の盲目の少年が落ちる音も隠した。

(カラァン。カラァン。カラァン。)

+++
盲目の少年と白痴の少女が書きたかったのに書けてない
困った

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