葬式の雰囲気は、好きではない。そもそも好きな奴などいるのだろうか。金が入る寺は嬉しいのかもしれない。煙が目に入ってちかちかする。それでも俺はこの光景を目に焼き付けておかなければならなかったから、真直ぐ向いていた。白と黒の幕がひかれたそこにはすすり泣く声もない。ただ雑音に溢れている。死者を弔う気など、まったくない。追い出してしまおうかと考える。騒々とした、雑音の発生源どもを。けれどそれでは、
名前を呼ばれ、振り向くと目を少し腫らした彼女が俺と同じような格好をして立っていた。
「ネクタイ、曲がってる」
首だけを向こうにやると仕方ないと言う風に彼女はほんの少しだけ表情を崩して、俺の首元を丁寧に正す。前にもこんな事があった気がすると思いながら、俺は棺に目をやって、そして気付いた。
「好きでした」
唇だけを動かして、薄く笑った。
そして俺はただ、祈った。
+++
葬列の彼女の話が読みたい
名前を呼ばれ、振り向くと目を少し腫らした彼女が俺と同じような格好をして立っていた。
「ネクタイ、曲がってる」
首だけを向こうにやると仕方ないと言う風に彼女はほんの少しだけ表情を崩して、俺の首元を丁寧に正す。前にもこんな事があった気がすると思いながら、俺は棺に目をやって、そして気付いた。
「好きでした」
唇だけを動かして、薄く笑った。
そして俺はただ、祈った。
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