5月4日の日記

2009年5月4日
空虚感が俺を満たす。悲しみよりも虚しさが、俺を襲う。
どうしても、できなかったのだろうか。どうしても、無理だったのだろうか。
誰も殺さないなんて、できなかったのだろうか。
誰も殺さない。誰も死なせない。
そんなことは、無理だったのだろうか。
「欺瞞ですよ」目の前の男は言った。

「少しでも自分の罪を軽くさせるための、欺瞞」

そうなのだろうか。そうなのかもしれない。
男の言葉には人を捩伏せるような力があったので、俺は納得することにした。
それなら俺は、どうすればよかったのだろうか。
「死ねばよかったのです」目の前の男は再び口を開いた。
そうなのだろうか。そうであったのかもしれない。
「けれど、」と初めて俺は声帯を震わせた。
声にださなくとも、目の前の俺には通じたのだけれど。

「俺は生きています」

そうですね、と男は言って目を伏せた。

「別に今からでも遅くはないと思いますが」

鉛のようだと思う。鉛でできた弾丸のような言葉。
だから、男の言葉は重いのだろう。

「いやです」

俺は簡潔に放った。

「だって、俺は生きているんですから」

死にたくない、という言葉に男は初めて顔を歪めた。
「俺は死にませんよ」笑う。俺の武器。
すると男は溜息をついて、「愚かな選択だと、知るがいい」消えた。

そしてあとは、俺の世界。

+++
主人公とタカヤの話にしようとして失敗した図

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