俺はさようなら、と告げられた唇だけをみていた。
それ以外は目に入らず、どうしようかとだけ考えた。
ふられているのだということはわかっている。
だからといって彼女を引きとめようと考えることはなかった。
ただ殺してしまおうか、と思った。
俺は彼女のことが好きだった。今でもそれはかわりないように思われる。
ただ彼女は俺が彼女のことが好きだということに気付いていない。
気付いていないどころか彼女のことなどどうでもいいように思っていると感じているらしい。
誤解だった。俺は彼女のことが好きだ。
しかしそれを彼女に伝えるすべを俺は持ち合わせていなかった。
ただ殺してしまおうと思った。彼女を。
自分だけの、俺だけのものにするために。
健康的なその首を、ゆっくりと絞めて、絞めて、絞めて。殺してしまおう、と。
「ごめん」
彼女の目が見開かれた。俺も驚く。
「ごめん」
もう一度繰り返される。勝手に口が動いた。
考えはもうまとまらなく、殺そうという考えも霧散した。
「好きなんだ」
勝手に涙が零れて、好きなんだと繰り返す。
もう俺は壊れてしまったかもしれない。前から知っていたことだけれど。
滲んだ視界の中で彼女は泣いていた。彼女も「ごめんなさい」と言った。
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
彼女の手から鉄鎚が落ちて、重い音をたてて床に転がった。
+++
似たもの同士の恋愛
それ以外は目に入らず、どうしようかとだけ考えた。
ふられているのだということはわかっている。
だからといって彼女を引きとめようと考えることはなかった。
ただ殺してしまおうか、と思った。
俺は彼女のことが好きだった。今でもそれはかわりないように思われる。
ただ彼女は俺が彼女のことが好きだということに気付いていない。
気付いていないどころか彼女のことなどどうでもいいように思っていると感じているらしい。
誤解だった。俺は彼女のことが好きだ。
しかしそれを彼女に伝えるすべを俺は持ち合わせていなかった。
ただ殺してしまおうと思った。彼女を。
自分だけの、俺だけのものにするために。
健康的なその首を、ゆっくりと絞めて、絞めて、絞めて。殺してしまおう、と。
「ごめん」
彼女の目が見開かれた。俺も驚く。
「ごめん」
もう一度繰り返される。勝手に口が動いた。
考えはもうまとまらなく、殺そうという考えも霧散した。
「好きなんだ」
勝手に涙が零れて、好きなんだと繰り返す。
もう俺は壊れてしまったかもしれない。前から知っていたことだけれど。
滲んだ視界の中で彼女は泣いていた。彼女も「ごめんなさい」と言った。
「気付いてあげられなくて、ごめんなさい」
彼女の手から鉄鎚が落ちて、重い音をたてて床に転がった。
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