5月30日の日記

2009年5月30日
俺はがたごとと俺は列車に揺られていた。
未練がないわけではなかったが、励ますように「また会える」と繰り返すうち、
自分でもなんとなくそんな気がしてしまったというそれだけの話だ。
だから悲しくないわけじゃない。寂しくないわけじゃない。
ただ胸に穴が空いたような気がしているだけだ。

そういえばとふと思い出す。
出発の直前に手紙を貰った。シンプルな封筒に入った手紙。
「絶対に行くまであけないでくださいね」なんて、そんなことを言っていたと苦笑する。
これをくれた人物も、泣いたりなんかしていなかった。
俺は封もされていない封筒をそっと開け、中のたった一枚の便箋を広げた。
そしてそれに書かれていた文字を視覚する。そこに書かれていたのはたった四文字。
しかしそれは、俺を泣かせるのには十分すぎた。

“す き で す”

行の始めには何度も書き直したかたがついていた。
何度も躊躇ったあとがあった。
零れた涙が染み付いていた。

「俺も、だよ」

きっと世界で一番誠実な言葉の手紙に新たなシミを作らないように気をつけながら、
俺は世界で唯一の切実な言葉を吐いた。

「忘れないから」

+++
これもある一種のさようなら

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